やがて彼女の動きが

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ウルがぼくたちふたり

思考力を抜き取られたようなのどかさがガリオンを浸していた。その昔、〈永遠の夜の都市〉の朽ちかけた廃墟でトラクと向き合ったときの気持ちとそっくりの、おだやかな決意だった。あの恐ろしい夜を思いだしながら、ガリオンはおどろくべき真実への道をまさぐりはじめた。半身を焼かれた神は、純粋に物理的勝利を求めて戦っていたのではなかった。すさまじい意志の力のありったけを注ぎ込んで、かれは人々を従わせようとしていたのだ。そして最後にトラクを打ち負かしたのは、ガリオンの燃える剣ではなく、屈服をこばんだ人々の不屈の信念だったのだ。夜が明けそめるように、ゆっくりと、真実がガリオンの胸にしみこんでいった。闇の世界を闊歩しているときの悪は無敵のように見えるかもしれない。だが実は悪も光を渇望している。だから、光が降伏しないかぎり、闇は勝つことができない。〈光の子〉が不屈の構えを崩さないかぎり、ぼくは恐いものなしなのだ。暗い洞窟に立って、ウルが去ったあとの余韻に耳を傾けながら、ガリオンは敵の心をじかにのぞきこんでいるような気がした。光と闇の対立の陰で、トラクは恐れていたのだ。そしていまですら、同じ恐怖がザンドラマスの心をさいなんでいる。
 そのうちガリオンはもうひとつの真実に気づいた。おそろしく単純であると同時に、かれという存在の繊維組織のひとつひとつをゆさぶるほど深遠な真実だった。闇などというものはないのだ! とてつもなく広大で圧倒的に思えたものは、光の欠如にほかならない。〈光の子〉がそのことをしっかり念頭に置いているかぎり、〈闇の子〉はけっして勝てない。トラクはそのことを知っていた。ザンドラマスも知っている。そしていまやっとガリオン自身もそれを理解したのだった。歓喜のうねりが体中に広がった。
「いったんわかってしまえば、簡単でしょう?」これまでずっとエランドで通ってきた若者が静かにたずねた。
「ぼくがなにを考えているかわかったんだな?」
「ええ。困りますか?」
「いや。そんなことはない」ガリオンはあたりを見回した。ウルの去ったあとの通路はにわかに暗さを増したように見えた。ひきかえす道はわかっていたが、たったいまつかんだ考えが、なんらかの確認を求めているように思えた。かれはふりむいて、大剣の柄《つか》にのっている〈珠〉に直接話しかけた。「ちょっと光をくれないか?」
〈珠〉はそれに応えて青い光を放ち、同時に澄んだ歌でガリオンの心を満たした。ガリオンはエリオンドを見た。「そろそろ戻ろうか? ポルおばさんがきみが見つからないんで心配していた」
 回れ右をして、無人の通路をたどり、来た道をひきかえしながら、ガリオンは愛情をこめて若い友だちの肩に腕をまわした。なぜかいまふたりはきってもきれない関係にあるように思えた。
 かれらは通路をぬけて、暗い穴の端へ出た。青白い光が切り立った壁に斑点を投げ、はるか下方の滝のつぶやきがかすかに聞こえてきた。
 ガリオンは急に昨日のことを思いだした。「ポルおばさんはきみと水のことになると、なんであんなに心配するんだ?」かれは好奇心からたずねた。
 エリオンドは笑った。「ああ、あのこと。ぼくが小さかったとき――〈谷〉にあるポレドラの小屋に引っ越してまもないころ――しょっちゅう川に落ちてたんです」
 ガリオンはにやにやした。「ぼくにはごくあたりまえのことに思えるけどね」
「最近じゃそんなことはしなくなったけど、ポルガラはぼくが水にとびこまないのは、なにか特別なチャンスをねらっているせいだと思ってるんですよ」
 ガリオンは笑った。ふたりはウルゴの洞窟につづく、小部屋の並ぶ廊下へはいった。そこに住んで働くウルゴ人たちが、通過するふたりをびっくりしたようにながめた。
「あの――ベルガリオン」エリオンドが言った。「〈珠〉がまだ光ってますよ」
「ああ、うっかりしてた」かれは陽気に輝いている石をふり返って、命じた。「もういいんだ。やめていい」
〈珠〉の最後のひらめきは少しうらめしげだった。
 みんなはゴリムの家の中央の部屋に集まって朝食を食べていた。ふたりがはいっていくと、ポルガラが顔をあげた。「いったいどこに――」言いかけて、口をつぐみ、エリオンドの目をじっとのぞきこんだ。「なにかあったのね?」
 エリオンドはうなずいた。「はい。と話したがったんです。ぼくたちが知る必要のあることがあったんですよ」
 ベルガラスが真顔になって、皿をおしのけた。「話してもらったほうがよさそうだ。たっぷり時間をかけて、なにひとつとばさんようにしてくれよ」
 ガリオンは部屋をよこぎって、セ?ネドラとならんでテーブルについた。かれは神々の父との会合を注意深く説明し、できるだけ正確にウルの言葉を繰り返そうとした。「そのあと、ウルはエリオンドとぼくはおなじ精神を分かちあっている、ぼくたちは互いに助け合い、支えあうことになっていると言われた」
「ウルが言われたのはそれだけか?」ベルガラスがたずねた。
「うん、でもそれだけなんてものじゃないよ」
「かれはぼくたちとともにあるとも言ってました」エリオンドがつけくわえた。
「すべてが完了されねばならないその時期について、もっとはっきりしたことは言われなかったのか?」老人はいささか不安げな表情で問いただした。
 ガリオンは首をふった。「いや。わるいけど、おじいさん。そういうことはなにも」


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